役所届出書類の簡素化経験
こんな事を書き、自分のホームページに置くのは、引き継ぎもなく異動してしまう役人の後任に知らなかったと言わせないためである。何度も同じ事を言うのも面倒である。「あそこを見て」だけで済まして、私の手間を減らす目的でもある。
《いろいろな出来事》
私はいろいろなところで役所との直接的あるいは業者経由の間接的な接点を持ち、その手続き処理には疑問を持っている。
- 役所手続きが必要なある土木工事を業者に依頼したところ、同じ用紙10枚以上に押印をしなければならないことがあった。疑問をぶつけると、いろいろな部署に絡むので、部署毎に提出しなければならないのだという。各々の部署に持ち込み申請の手続きなどしているのでは大変な手間であり、全部コストになる。民間の企業がこんなことをやったら、誰もその企業には依頼しないだろう。1枚提出させ、受取側でコピーでもして受取側の内部処理で配付すればよいものを、疑問も持たずに平気でやらせている。
- あることで、複数の部局にまたがる要請をしたことがあった。複数の部局にまたがるものとはいえ、では上に出そうとなると市長になってしまう。市長はこんなレベルのものに対処させるわけには行かない、失礼だし中心部局は明確であるから「各々の部局の見解は××部局でとりまとめてくれるように」と添え書きしておいた。
にもかかわらず各々の部局より連絡が入ってきた。そこで「文書を見たか、何が書いてあったか見たか、私は各々の部局の見解など聞かない」と断ったことがある。
- 私は商人であり、こんな関係から市議会議員との接点がある。ある議員10人、我々10人ほどの会合で「諸手続の簡素化」が話題になった。こちらからは「手続きに複雑なものがあるので、何とかならないか」と言うものである。ある議員が「そんなこともありますね」と流したので「何のための議員なのだ、横断的に観て改善をするのが議員なのではないのか」と発言したところ、その後議員は黙りこくってしまった。議員もレベルが低い。合理化とな何なのかなど全く知らないのだろう。
- ある補助金の申請などの書類を大幅に削減させたことがあった。以降はそんな出来事の記述である。民は本当におとなしい。
《補助金手続きの簡素化経験》
- 商店街でイベントが企画され、補助金を受け取れることがわかったので、それを受ける方針となった。
- 当初3年ほどは、区役所の女性が手続きなど引き受けてくれお任せしていたので、大変だなと思いながらも、疑問などは感じなかった。
- しかし、女性はあれこれと他の仕事もしている。役人にいつまでもやらせては税金の浪費だから、こちらで引き受ける方針として私が処理を開始した。こちらだって、時間という金はかかるのだが、まあ暇な時間を使えば、ボランティア感覚で済み、人件費などとは考えない。
- そうすると「何故こんな書類や記述事項や押印個所が必要なのか」など続々と出てきた。私は、商店街の上位組織の役職でもあったので、補助金の管轄部局との接点もあり、いろいろと指摘をしはじめた。
- 間もないある時に制度変更が企画されており、その時に合わせて申請側の意見を聞きながら様式を整えると言うことになったので、私が民の代表としてそれに当たることとして、改善に取り組むことになった。
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なぜ、引き受けたかと言えば、
- まず、市の中で補助金を受けている団体は1制度でも100などある。これらの団体が皆苦労をし、かつそれを処理する役人側も馬鹿馬鹿しい苦労をしているのは国家的な損失と思っていたからである。こんなものは私の定義では(インテリな)仕事とは言わない。
- 次は、苦労している民はおとなしく市の部局にもの申すことがあまり出来ないからである。仮に言っても、役所はのらりくらりで、そんなうちに役人は異動してしまい、リセットなり、指摘側は息切れしてしまう。のらりくらりは役人の処世術と思っているからである。
- 最後は、私は具体的に作業しており、私以外に具体的な指摘をできる人間は居ないと思ったからである。
- 市の担当者と直に接し、直させるべき点は全部指摘した。しかし、第一次改善というものは私の目から観ればまだまだであるので、次のステップへ向けての行動が必要であると思っている。恐らく役所側は終わったと思っているのだろうが、まだまだである。
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- 補助金の対象となるものにスタッフの食事代があった。これは改善により補助の対象とならなくなったが、書類は大幅に減りそれでよしとした。
こんなことである。スタッフのために弁当を手配する。イベントは複数の個所で実施する構造になっており、各々に責任者や会計が居る。手配なども各々の責任者の管轄下で企画して自由に実施して良いと言うことになっている。こんなことで、弁当などは複数の商店から仕入れることになる。値段の目安を決めてはおくが、完全に一致することなどはあり得ない。
こんな中で、手続き書類には「いくらの弁当が誰に渡ったのか」を明確にするために、受け取った人の個人別受取あるいは一覧表(責任者の記名押印が必要)が必要という。かつ、受け取った人の所在を明らかにするために、名簿が必要という。唯でさえ忙しいのに、こんな事を実施中にやっていては手間ばかり増してしまうので、後付で処理するのだが、後であれこれつじつま合わせも大変である。こんな定めが平気でまかり通っていたのである。強く指摘すると役人側も「我々も大変だったのです」などと言っていたのだが、こんな事を言いながら、自分達がこんな事で人件費という税金を消費している反省は全くない。こんなことで、種類はまずバッサリ減ってしまった。
総額100万円ほどのイベントで、食事代などに20万円が使われ、補助率20%ならば、たったの4万円の補助金、こんなために巨大なエネルギーが使われていたのである。
- アンケート調査がある。ある時から会場別にアンケートが必要となった。これも削除させた。
唯でさえ忙しい最中に、紙で抽象的なアンケートをとることは大変である。そのスタッフを用意しなければならないし、答える側もイベントに来ていて紙を書かされるなどおっくうであり、いやがられる。「本当に来訪者の意見を聞きたければ、役所自ら出向いて聞いて、自ら書くべきである、いい加減なアンケートなど何の役にも立たない」と指摘した。これでアンケートはなくなることとなったが、その代わりに、市の商店街連合会が委託され、民間OB団体に丸投げされ、イベント開催時にはOBが訪れ、人々から聞き回ることになった。
- 毎年商店街規約も提出となっていたが、これも削除させた。
滅多に変わりもしない規約を何故毎年提出しなければならないのだ。市側で商店街規約ファイルでも用意しておき、変わったら再提出でよいだろう。市の保管方法が悪い、というのがこちらの指摘である。こんな事をやっているから書類保管倉庫まで増え、また倉庫費用が増すと皮肉った。
- 写真を出せ、と言うのもあったが、これもなくした。
アンケート調査と同様だが、区役所のトップや担当者までが一緒にやっているのに「証拠を出せとは何だ」という主張からである。
- こんな会話もした。補助金の支給では、議員・民間団体・監査・オンブスマンなどから指摘を受けることがあるだろう。指摘される度に、役人側が書類上の100点を目指し「それではこのような書類を増やします」とやったのでは際限がない。些細な指摘などは「それでは、貴方と主催者を会わせますので、事情聴取してください、とやればよい。役人が自己防衛のために書類を増やすのは大迷惑」と言うものである。
- 「合い見積もりが必要」などもあったが、なくさせた。
わずか数万円のものなど何故必要なのか、という指摘である。こちらも見積もる業者も僅かな金額のことに何故こんな手間が必要なのかと言うことからである。見積もる業者も大迷惑である。
- こんな会話もした。補助金の支給では、議員・民間団体・監査・オンブスマンなどから指摘を受けることがあるだろう。指摘される度に、役人側が書類上の100点を目指し「それではこのような書類を増やします」とやったのでは際限がない。些細な指摘などは「それでは、貴方と主催者を会わせますので、事情聴取してください、とやればよい。役人が自己防衛のために書類を増やすのは大迷惑」と言うものである。
- 主催は、市も認知している団体である。そこに町会や周辺団体からの協賛応援がある。そうなると、協賛応援団体の長の記名押印などが必要だったのだが、これもやめさせた。
理由は「何故、そこまで必要なのか」だけである。協賛応援団体の長などは忙しい。忙しい双方が記名押印などやりとりするのは大変だからであるし、主催団体を信用しないのかとなるからである。
こんなことで、官民双方合わせればこんな計算が成り立つ。
1団体が処理に要する削減時間を50時間、お役人の処理に要する節約時間を10時間、双方の時給は安くして2000円、100団体の存在ならば
即ち (30+10) X 2000 X 100 = 800万円 である。ただ、金額が減ったと言うことではなくて、馬鹿馬鹿しい仕事が減り、新しいことに頭を使うことが出来るという事であり、この考え方の進歩や影響の方がはるかに大きい。
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こんなことで、提出書類は半減以下となってしまったのだが、まだまだの点がある。
- 第1は、パソコン時代となって、マイクロソフト・エクセルなど多用される時代になってるのに、会計書類の基本が未だに手書き中心であることである。手書きは極めて生産性が悪い。費目別の計算などを要求されるので、私の場合にはマイクロソフト・エクセルなどを使って、役所の必要な費目別計算や自分が分析したい計算などを一緒に計算できるようにしているのだが、役所の様式は紙原則である。恐らく役所担当の能力が低く、マイクロソフト・エクセルの計算様式を提供する能力がないのだろう。改善の打合せ時に指摘すると「いずれは」などと言っていたが、その後数年何の進歩もない。私の場合は、独自のものを役所に送り、それで済ましている。
- 第2は、この補助金を受け取るまでには、エントリー→申請→報告→補助金支給などという過程を経るのだが、それを双方で管理する管理表がないことである。規約変更があっても黙っていれば、役所には提出しないでも見過ごされてしまう。役所の担当者は数多くこなしているので、頭に入っているだろうが、年1回のこちらはその都度「今回は何だっけ?」となる。役所と当方共有の管理表などが補助的にあれば、双方が随分と楽できるし、落ちも減ると思い改善時に指摘しておいたのだが、一向に設けられない。
- 補助金を出すだけが目的であるから、役所は1イベントを通して費目別で見られればよいのだろう。ところが、複数の場所で行われているイベントなどは、スマートなやり方を考えれば場所別・費目別のまとめを更に集計しておく方が便利である。だから、様式など(マイクロソフト・エクセル帳票を含む)は、両方がかなえられるものが良いはずである。ところが、民側の便宜を考える頭にない。それがまた、双方に余計な作業を生じさせる。
- イベントに対する最終申請は、イベントの1ヶ月前など比較的遅い時期になる。詳細が確定しないことも理由である。その後市の処理が行われ市の正式許可となる。領収書などは正式許可日以上でなくてはならないというのだが、ポスターなどははるかに前に印刷などを終えている。
- その他だが、こんなものがある。イベントの領収書だが、300円などと些細なものまで明細が必要がある。500円でも1000円でも以下など明細必須でなくてもよさそうなものだ。そんなものをちょこっと購入して明細など要求していたら、商人などその手間だけで利益が減る。役所は規則だからと、いくら馬鹿馬鹿しいと思っても、それ以上考えようとしない。こんな点は皆そうである。民間企業などだと、そこから先を考え合理化しないと生き残れないのだが、そんな考えは毛頭無いらしい。不備などがあると、資料まで作成して問い合わせてくる場合がある。それだけで何倍かの人件費がとんでしまう。それでも、仕事を消化していると言うことは低生産性の証である。
イベントのポスターなどの提出もある。見に来て、レポートを書く人まで居るのに、まだ証拠を出せと機械的に言うのだろうか。
昔居た会社では工場に「mH(ミリアワー)」と言う単位があった。1/1000時間で3.6秒、機械的な行程作業には、この単位で標準作業時間が設定され、管理されるのである。多少は、こんな感覚も持って欲しいところである。
《民間団体の問題点》
こんな事なのだが、補助金を受ける団体にも問題点はある。
- 改善会合で、役所から満足な申請は1〜2割と言われ申請書類を見せてもらったことがある。本当にひどいもので、役所の方で本来は民が作成すべきものを「役所で書類を作成してやっている」という実態もある。私だったら、そんなものに対する補助金はバッサリ切り捨てしたいところだが、補助金を出すのも自分の正統な仕事だから仕事を減らしたくもないし、団体からの圧力もあるだろうからそうも行かないのだろう。提出書類の複雑性はともかくとして、原因は、民のレベルが低いことである。パソコンやマイクロソフト・エクセルなどを使いこなす団体が少ないことである。
- 今の時代にそんなことは少ないだろうが、過去には商店街などは随分とごまかしなどをやってきた事実があるからである。役所の警戒心が今尚残っているということである。しかし、何事も性悪説で考えると、チェッカーが必要になり、そのチェッカーの信頼性を考えると、またその上にチェッカーとなり際限がない。小さなことは性善説で考え、何かあったら信賞必罰で望むしかない。これを実行するには、役所の勇気というものが必要なのだが、堂々としていない組織にはそれが出来ない。
- 過去何十年かは知らないのだが、こんなことを延々とやり続け改善提案もできない民側の団体の智恵のなさにも呆れはてる。
どんな国でも、非効率な面がある。日本はまだ良い方なのかも知れない。しかし、そんな国でも、これまで書いたような事例は数限りなく存在しているだろう。そんなものをコツコツ直して行かなければ、老齢化・少子化などに対応できず国は劣化の一途を辿るだろう。役人は安泰ではなく、国あっての役人であることを忘れてはならないだろう。
会社で、ある予算を出してもらう時にかかるコスト(人が考えたり資料化したり説明したりする人件費)などは多分予算よりはるかに低い額だろう。補助金は所詮補助なのだから、少額補助金などの場合には、官民双方で作業する人の人件費が補助金を上回るような事も考えられる。何もしないでハイと出すわけには行かないのはわかるのだが、少額補助金などはイベントの実施を観て、ハイと出すのが最も国家損失が少ない方法である。