市の備蓄
ある人々が、非常時のために使用される市の備蓄倉庫を見学したら、備品リストも満足になかったそうである。また、ある中学校地下に設置されている非常用の飲料水の貯水槽をチェックしたら、建築時に水を満たしたまま10年放置、ポンプも動かさず状態で何とか動いた状態だった、という話である。ある人々がと書いたが、ある委員会の話で、私もそのメンバーなのだが、理由があってこの見学には一切参加していないので、後で聞いた話で、正確性はない。
非常災害用の備蓄と言われれば、ある程度の常識ある人ならば、食べ物でお飲料でも備品でも、
- 管理部門を定め、
- ある量を見込み備蓄し、
- 備蓄品リストを作成・管理(更新を含む)し、劣化するものはFIFO(First in,First out)で入れ換え管理し、
のように思って当たり前なのだが、いずれも、こんな初歩的なことですら全く行われていないように思われるのである。
私の場合だが、自営業で自分の敷地内にいくつかの建物を所有しており、居住者もいる。震災などあっては困るのだが、そこで建築時から非常時のためにこんなことを考え実行している。
- 建物は容積率も建坪率も目一杯建てないようにしている。エレベータが停止しても普通の人なら歩いて上下できる範囲である。敷地内には、駐車場や庭のスペースを持っており、非常時の逃げ場所は、学校・公園などに行かなくてもここで十分対応できるようにしている。
- 樹木などを残しており、20年以上も前から「環境に配慮したいので、ご理解をお願いしたい」と入居者に案内している。落ち葉や虫などであれこれ言わせないためである。樹木を通過してきた風は涼しい。子供達がセミ取りに来る。
飲料水だが。建物すべてに貯水槽を設置している。業者からは「最近直結でも良いようになった」とは言われているが、直結は水道管の引き直しが太いものに必要になるし、ある考えからそのようにはしていない。ある考えとは、
- 直結では、電気が止まったら直ぐに水は出なくなる。
- 浄水場からのルートに問題でも発生すれば同様に出なくなる。
- 貯水槽タンクの破壊さえなければ、誰かを非常時の番人にお願いし、コックの開け閉めで飲料水は供給できる。飲料水だけなら1週間は持つだろう。
などを考えてのことである。定期点検や保守でお金は直結よりかかるが、このようにしている。最近、数百万円かけて貯水槽を新しくした。
- 食料としては、温めれば食べられる米を数日分用意している。これらは、時々消化し、FIFO(First in,First out)で入れ換え管理し2年以上のものが出ないようにしている。
- 日本の家庭の場合には、米などはあるだろう。米は栄養バランスがよい。数日ならこれだけ食べていれば十分である。所帯持ちなら黙っていても持っている家庭は多いだろう。
しかし、火を使えなければあっても駄目である。七輪も用意し、たどん、練炭なども結構な量を備蓄してある。飯ごうなども結構便利なものだろうから、用意するようにしたい。
- トイレも困るようである。建物周囲には裸地を残してあるので、穴でも掘って(若い人にでも掘ってもらって)何か囲いでもすれば、非常用トイレ程度は何とかなる。スコップも勿論ある。
- ある震災の報道を見ていたら、バールが必要な場合が多いと聞き、これも用意した。
- 周辺にブロック塀なども設置しないよう、する場合は低いものにするよう注意している。
とこんな程度は自己防衛しているのである。自分で気付いたものもあるし、テレビを見ていてのものもあるが、多くは前者である。しかし、これに比較し今の市の状況はどうなのだろうか。
さて、備蓄問題に入ろう。ここで、市民の基本的な精神だが「自分の身は自分で守る精神で居てくれなければならない。市の備蓄などは一人住まいの老齢者などの弱者に対するもの」と思っておくべきだろう。
前述の、問題に対して私なりに考えてみた。
第一の食料品備蓄問題だが、直ちにこんな事が思い浮かぶ。
- 当初は、適当に業者に委託して納入させ、リストなどをつくらせた。
- 備蓄場所は、学校内などだから、教育委員会と区役所との睨み合い状態になり、放置された。
- 当初の担当も異動で変わり、責任を持って管理する人は居なくなった。
- 食料、飲料、備品などリストがあれば済むのかといえば、それはFIFO管理には役だっても、非常時に役に立たないだろう。非常時には見ただけでわかるように整理・整頓されているかであろう。でも、単に置いてあるだけのような気がする。民間会社の倉庫の整理方法の真似でもすれば良いはずなのに。
第二の非常用飲料水問題だが、直ちにこんな事が思い浮かぶ。
- 水の備蓄が決定され、予算がとられた。担当部署は水道局なのだろうか。
- 水道局の担当者が企画を開始した。場所は、土地がある学校用地である。ところが、ここは教育委員会管轄である。
- 調整の後、学校用地が使えるようになった。かつ、地下を使えるようになった。
- 水道局の(幼稚な?)企画担当者が、民間業者を使いながら、企画を実施した(多分、土木や建築や衛生管理の部署や専門家は入っていないだろう)。
- 民間施設ならば、まちづくり局などのチェックが入るが、縦割り行政で他の部署問題には触れたくないので、チェックはなかった。
- 業者任せで竣工した。竣工チェックなども所詮素人チェックであった。
- 竣工後、管理部門の明確化も放置された。民間の貯水槽なら毎年1回保健所のチェックがあり、文書回答をしなければならないのだが、役所内は抜けても気付かない状態であった。
これは推測で正確なことはわからないし、調べるつもりもない。こんなことに時間を費やすのは馬鹿馬鹿しい。これは、市の「怠惰問題」の一言で片付けたい。その原因は市の建設時の計画の悪さ(誰が・どの部署がこんな機能しないものを企画し許可したのか)と管理体制にあるように思う。「民間から見ればお粗末なこんな仕事の仕方がまかり通るのか?」、その原因を追及しそこを直さない限りこんな問題は延々と出てきて続く。こんなものは、市長などのトップが悪いのではなく、下が頭を使って自律的に動いていないだけのことである。市長などはこんなものまでチェックする暇はない。こんなものを、見学会などで市民にチェックさせるのは「馬鹿で常識がないから、観て直して下さい」と言っているようなものである。