多くの行政では、防災システムといって非常災害時に同一行政管内で連絡がとれるような、通信システムを構築している。ところが、それには問題多きものも少なくないのではなかろうか。
そもそも、大震災などになったら、建物やその付属設備などはどうなるかわからない、電気は止まる、非常用発電器などといっても大型のものはまず駄目になるであろう、地殻変動で地中埋設物などどうなるかわからない、などなどを考えられる。こんなことは誰でも知っていることである。これを通信網に当てはめて考えると、日常の通信設備は全く役に立たないということである。即ち、建物中の通信設備は破損か電気停止によりまず使えなくなる、埋設されている通信ケーブルはずたずたになるからである。
生き残り頼りになるのはこれ以外のもの、即ち建物中の大きな設備でもなく、通信ケーブルも使わないような、軽量の移動できるような無線系のものに限定されてしまって当然と考えなければならない。例えば、自動車搭載の無線機などは、動いて振動を受けることが前提であるから、丈夫に出来ているのである。即ち、多少揺すぶられても何ともないものしか頼りにならないはずである。それは、小型であることが条件となり、大きくなっても高々自動車やヘリコプターで運べる位が常識的なところである。神戸震災でこのようなことは問題になっていたが、ある程度の技術者はこんなことは重々承知なのである。
さて、最近の行政通信システムがどの様に構築されているかは知らない。かってある行政の防災システムの図面を見たことがあり、次のようなあまりの問題に驚いてしまった。
(1)重要な回線に地中ケーブルが使われている、
(2)かつ地中ケーブルが断線したような場合の切替にプログラムが使われており、すべての切替のプログラムが保証されているとは思えない、またその切替を行う装置が震災時稼動する保証はない(要求されても無理な話)、
(3)人間とその訓練が当てにされていない、
プログラムといえども人の作るもの、考え落ちや欠陥もある。最終的に頼りになるのは訓練された人間ということが設計者や行政がわかっていない、
などである。行政は、諸々コンサルタントを使っている。しかし、大方は業務改善や民間支援のようなものであろう。多くの専門家を要するような企業、例えばNTTのような場合は、メーカの設計をチェックする能力を持っているが一般の行政ではその能力は無理であろう。経験に乏しいお役人が、システムチェックすることは不可能で、多くはメーカーのいいなりである。このような時こそ、その道の引退でもした企業OBでもコンサルタントとして使えばよいと思う。我が市はどうだろうか。
こんな事を思っていたのだが、その後市の無線についてこんなことがわかった。20万人の区に数台の無線機と言うことである。東日本大震災では役所の建物毎流されてしまったところもある。非常時には一般の衛星電話などを中断し、非常用に切り換えられる衛星電話などを行政に持たせることはできないだろうか。土木系の予算に比較すれば大したことはないだろう。