設計者
施主が接するのはまず「設計士」だろう。何事にも得手不得手はあるから、これからの建築に適した設計士を調達できるかが、その後を支配することになる。
設計士には、組織型と個人型の二つのタイプに分けて考えるのが良いだろう。
- 私は当初設計士というものは「構造などに強いエンジニア志向の人」などと思っていたのだが、そうではないことがわかってきた。考えてみれば当然のことなのだが、敷地とこれから企画しようとする建物の整合のために、設計士には建物デザイン志向の人が多いことがわかってきた。構造が十分なのかなどは構造をチェックし計算する別の人が居る。
- 設計士の一つのタイプは、大きな設計事務所あるいはジェネコンの中で組織的に仕事している人々である。このような場合は、一つの集団中での得手不得手を考慮して最適な集団を校正することになる。いろいろなジャンルに強い人が組み合わさっているから万遍なく設計をカバーできる特長がある。また、多人数だから並列的に複数の仕事を抱えなければ食べられないことになる。
- 設計士のもう一つのタイプは個人型である。この場合は圧倒的にデザイン系が多いだろう。個人型や小規模設計事務所は、そもそも仕事は少ないから仕事があったり、なかったりする。そこで、特殊部分や構造計算などは外部に仲間を持ちスポットで委託することになる。最近は機器などは益々多様になってきた。そんなことで、細かい点までどこまで気が回るかが大きな問題になる。
- 私は、偶然だが10程の建物にかかわる人生になった。設計士も個人型だが、偶然この人ならば大丈夫だろうと言う個人型の人に巡り会った。そんなことで、彼とも30年近い付き合いを続けており、保守や改造まで一貫して手伝ってもらっている。しかし、1回限りと言う人が多いだろう。マンション購入者などはここまでの設計士との接触はないだろうから零と言えるだろう。設計士は自分の次の人である、時間をかけて慎重に選ぶべきだろう。
私の場合だが、こちらの考えが設計士の頭に入ったと思ったのは、3つほどの建物を経験したときである。
- 設計士は、設計図面を仕上げる、ジェネコンが受注するとジェネコンは施行図面を仕上げる。こんな点では設計図面は全体的にはデザインである。当然設計図面も完全でなかったり、設計図面では工事がやりにくい部分などが出てくる。やって行く内にコスト面で何とかして欲しいという点も出てくる。こんな時に、施主とジェネコンの間に入って、真面目かつ厳格に対処してくれる設計士が必要である。設計士とジェネコンがぐるになったら施主はごまかされてもわからない。
「ぽかん」としたことがある。自宅を義理となじみで地元の老大工に依頼したときである。ベニア板2枚に柱だけ書いた、柱図とも言えるもので仕事をしている。他に図面があるのだろうと思っていたら、無いという返事が返ってきた。こんな事でも小さな家なら出来る。でも、施工図を書けない大工さんは大きな家・難しい家・新しいものがある家は出来ないだろう。
- よく、安いからと設計込みでジェネコンに依頼する人が居るのだが、私は決してこれをしない。施主・設計士・ジェネコンという階層を守って建築している。私の専門は電気だったのだが、親父が不器用なものだから、器用な母親と一緒に高校生時代に自宅のお神楽化、サラリーマンになった20代後半に家の新築などにかかわってきた経験があるので、結構うるさい施主だろう。部分によってはこちらの方が詳しい場合がある。サラリーマン時代は量産機器の設計をやってきたから、品質重視で一品ものの建築以上に厳しい点がある。やりにくい施主なのかも知れない。