開業後の諸々 ハード面と保守
実際にホールにタッチしてみると、とにかく開業はしてみたものの、不足する点は多々あった。こんな点は気付く度にコツコツとやってきたものである。秋葉原まで1時間ほどの距離にいるのは有り難い。
- 《音響装置》
- 音響装置は業者任せで入れてしまった。当方にチェック時間と知識がなかったからである。この結果、過大な音響装置が設置されてしまった。使い切ったことはほとんどない。使い切ると建物が震えてしまう。これは過大投資だった。
- にもかかわらず、こんなこともあった。竣工し機能確認をしていると、あって当然の機能が抜けているのに気付いたので、変更追加させた。電気屋で一般知識はあるのでわかったことである。配線の逆相も1個所あった。これは別の人が耳で発見した。こんな馬鹿なことがあるのだろうか、業者もいい加減なものだと思ったことがある。
- さらに、業者が持ってきた音響装置の接続図は手書きで粗末なものだった。そこで音響装置の勉強をしながら自分のパソコンで接続図を作成した。これをすることにより随分と頭に入った。まあ、電気屋だったからできたことだろう。
- 音響系は、操作上不便なこともあり、自分で秋葉原などで部品を購入し小細工をしたり、小改造もした。
- 20年間故障もなく動いているのだが、いずれの更改では大幅に設備削減しようと思っている。当ホールの利用者の場合は希には音響利用者もいるのだが、ほとんど手慣れた小型の物を持ち込んでくる場合がほとんどだからである。こちらでもそれを勧めている。持ち込み料はいただいていない。
- 設備だが何というのかは知らないが、専門家やこのような場で使われる耐久性の高いものと一般のものがあることも知った。今後の更改だが、耐久性は多少低くとも極力一般のもので更改する方針である。一般のものも良くなっているし何といっても安いのがよい。
- 運営後20年、テープレコーダは廃止してしまった。その代わりに一般品のDVDレコーダーやCDレコーダを入れた。ところが、これらは使う方が余程習熟していないと使えない。知っていると言って使わせると全然そうではない。手間がかかるようになっている。
- 更にだが、テープがすたれてきて、かといってMDなどはメインにはならず、パソコンによる録音も実施しなければならなくなった。更に手間がかかる。
- 元は電気屋の私だがジャンルも違い、マイクのレベルが、ラインのレベルがなどといっても全然知らなかった。ここ数年で随分と強くなった。わかると測定道具も欲しくなる。と言っても、高いものには手が出ない、最低限の道具として1万円少々でディジタルマルチメータ(いわゆるテスターの一種)なるものを買ってきた。
- 《照明と吊り物装置》
- 電球の交換などは自分でやっている。1年ほどしてハロゲン球(500W)が切れ始めた。設置業者に手配を頼むと「うちは高いんですが」と言われたのだが、仕方がなく依頼した。1球8000円程した記憶がある。その後しばらくして秋葉原をぶらついていると「特殊電球屋」さんがあったので入ってみた。値段を聞いてみると6000円少々、それ以降はそこから買うようにしている。しかし、昔は在庫が置いてあったのだが、今はなくなっているので、電話注文の着払いで処理している。インターネットで注文できるようになっているのだが、ここほどは安くない。
一般的な電球ならともかく、通電したまま交換しようものなら一瞬にして電球に手が焼き付くことは知っているので注意している。もう一つの注意は「電球に手で直接触れないことである」、寿命が短くなるようである。これは不思議なことである。ところが実際にそのようである。家庭や店舗などでも小さくて体裁がよい丸いハロゲン球などが多用されている。数十ワット程度のものでも手で直接は寿命を大幅に縮めるようである(電気屋さんが言っていた)。脂の付着などで、熱放散などが悪くなるのかも知れないのだが、わからない。ほとんどの設計士はそんなことは知らないから、どんどん使うのだが迷惑する。でも、最近はLEDが出てきたので、どんどんと置き換えている。
- 年に1回業者が定期点検に訪れる。約20年経過し、一番加重がかかる重いサスペンションライトのワイヤーを交換している。
- 大がかりな照明持ち込みはお断りしている。電源キャパがないことやそこまでやらせると搬入や搬出で大変になるからである。ホールも傷む。
- 真面目な業者なのだが、ある時照明装置のあるパッケージのパワートランジスターを交換しなければと言ってきた。私は装置の構成や動作原理は知っている。そんなことがあるはずがない、そんなことで心配があるならばと「予備パッケージ」を注文し置いてあるのだが何も問題はない。とにかく、業者の言いなりになると余計な金ばかりかかってしまう。ひどいのはエレベータ屋である。
- 私も電気屋のはしくれだから、点検に訪れる人と会話をする。いずれ機器も更新しなければならない時期が来るから、情報を得ておきたいからである。20年も前の設備だからコントローラと主装置の間は非常に多いケーブルで接続されている。今は、通信制御による少ないケーブルのようである。ただ、変換機もあると聞いている。
ホール証明は1灯500ワットなどというものもある。LED証明も出回ってきたのだが、まだ光量がここまであるものはないようである。更に、減光した場合白熱灯のようには行かない、と聞いている。ホール内での発熱は、空調機をそれだけ動かさなくてはならず夏は特に問題だがいずれ何とかしなければならないだろう。
- 個所的には少ないが「あの電球どうやって取り換えるのだ」と言うものがある。そこまで考えて設計していないのだ。これには迷惑する。ちょっとしたことで業者に頼まなくてはならない。
- 《空調とエレベータと音》
空調音というものは意外にやっかいなことがわかった。空調機を停止している場合でも、室内機には電気が通じており、そこに低周波の交流音が発生している。これはちょっと気にすれば明らかにわかるものである。当ホールのエレベータはやや高速のものが入っている。そのモータ音がかすかに聞こえる。滅多にないのだが、録音などの場合には、空調機は大元で電源を遮断する。その代わり夏場などでは録音は無理になる。静かな音楽の場合には、電源遮断はしないが演奏中は空調機は極力しようしないようにするなどである。
少ないと言えるだろうが、こんな故障修理がある。
- 空調機が真夏の最中に故障してしまった。2システムを設置してあるので片方だけでしのぎながら修理をすることが出来た。最初に訪れた修理者は「コンプレッサ故障です」と言うので「使用劣化はしていないはず、別なところではないか」と指摘したのだが、こちらも専門ではないのでやらせておいた。新品のコンプレッサーを持ってきて対処したが駄目である。後日ベテランが来たので見ていると、あっさり「パワートランジスタ」ですね、と言って、その交換であっさり直った。さすがに恥ずかしかったのか修理代の請求は来なかった。
- 20年近く経過して、室内機で「キーン」と言う異音が発生し徐々に大きくなるようになった。インバータの故障だった。はじめて知ったのだがインバータは「当初はファンを強く回し、室内温度が下がってきたら徐々に弱くする」ためにあるのだという。4台中2台を交換している。しばらくは大丈夫だろうが、室外機と室内機はインターフェース上一体で、交換では双方交換になるらしい。
ある録音時に「時計の音がする」と言われた。高いところにある時計の指針が動く音が聞こえるのである。こんなことで時計を停止する場合もある。
- 《ノイズ》
近場で大きな工事などがある場合には「申し訳ないが、当ビルにはホールがあり、破裂音などや震動が生じると困る場合がある」と言うことで建築者や業者には工事日程の調整確認をお願いしている。日曜祭日はまず工事はないことと、平日は当ホールが使われることは少ないので、調整が必要なのはほとんど土曜日である。
- 《ホールの状況把握と監視カメラ》
当方は管理事務所2階、ホール5階となっている。気付かなかったが、開業後不便なのはホールの状況を把握出来ないことだった。しばらくして、ホールにある録画カメラを使えば、それを2階まで延長して状況把握が出来ると思ったので、延長してもらった。これで随分と楽になった。電気系は全部知り合いの電気屋にお願いしている。この場合も電気屋が気を利かせて「何か必要になるだろうと思って、ルートに予備をつくっておいた」と言うことで容易にケーブルを敷設することができた。
その後10年ほどして監視カメラも入れることになった。そこで監視カメラの1チャンネルをホール監視に利用することになり更に便利になった。あちこちで見られるようにと分配器などは自分で秋葉原で購入し接続した。
- 《楽屋》
全くの考え落ちだが、規模は別として楽屋は最低2つ欲しいことがわかった。男女別に使用するからである。幸い、テナントとして貸し出す予定の部分があったので、そこに会議室兼楽屋で追加することにした。ただし、ここは通常は会議室(30人)として利用している。また、ここでは食事などもとれるようにしている。
- 《清掃》
利用者がクラシック系と言うこともあり、ホールは静かに使われ、汚れも少なく有り難い。当初は、家族清掃だったが仕事も増えるので最近は週1階の定期清掃をお願いしている。しかし、土日などの連続使用もあり、清掃が行われない場合は家族清掃を実施している。
- 《掲示》
嫌いで小学校時代に放り出した習字であるが、開業後掲示をパソコンで書き、コピー機で拡大して掲示するのは(人がやってくれてはいたが)手間や時間がかかり不便だった。知り合いに良い先生が居るので弟子入りし、習字を習うことになった。うまく書けたと思うことはないが、大きな字・小さな字も筆一本で随分と楽になった。業務の効率化であり、まあこれだけは晩年までできるだろう。
- 《駐車場・駐輪場》
当初から5台分を主催者用に用意し、主催者に駐車券を一括して渡すようにしている。ある時期は駐車場不足かなと思う時期もあったが、飲酒運転が厳しくなったことと、当方が多くの場合発表会などで使われることが多く、先生が配分するのも「もらった、もらえなかった」で面倒なのだろう。不足することは滅多にないし、不足する場合には「外部の有料駐車場が近場にある」とだけ案内することにしている。一般の人から「駐車場あるか」と電話で聞かれることはあるが、あっさり「一般の方用にはない、近場の有料駐車場に」と返事している。
いくらと聞かれると、あちこちにあり値段も知らないから「わからない」と応じている。車を持っていて、数百円や千円程度の駐車料金を聞いてくる方がおかしい、と思っているからである。希にだが、ホール入り口に無断で車を突っ込み駐車する大馬鹿が居る。こんな時は探して厳しく注意する。
駐輪だが、ビル脇に5メートル幅の私道が30メートルもあり、違法だが駐輪しても車は通れるので、そこを活用している。万一の場合に大型車などとなっても、自転車ならさっさとどけられる。
- 《その他》
などであるが、あまりないと言えば、なかったとも言えるだろう。