ピアノの管理
- ピアノは当初1台で開業した。1台だから外国製のある程度良いものを入れようとした。ただ資金的な問題もあったから、中古品を探そうとした。知っている楽器商が居たので声をかけ中古品を妻と娘に見に行かせた。訪れた工場に行くと、20年くらい経過したピアノを修理して販売している。しかし、価格は新品の半値以上70%位と言うような状況と言うことだった。そこで思い切って新品とすることにした。家に出入りしていた調律師さんの世話になり新品を購入した。円高の時期でもあったので、安く買えた。ピアノの移動機も受注生産と言うことだったので同時に手配した。
- 開業後間もなくした頃「何もかもこのピアノを使わせるのは勿体ない」といろいろな人から聞こえてきた。それもそうだし、乱暴と言っては申し訳ないが、そのような使い方をする人が居る、様々な利用者もいる。そこで家にあった国産の1台をホールに移動し、2台の運営にすることにした。ピアノ倉庫はギリギリだったが幸い2台を納めることが出来た。
こちらの利用が70%位で圧倒的に多い。
- 2台目をホールに入れるときだが、ピアノ業者を手配しようとした。見に来た業者は出来ないと言って帰ってしまった。2台目は1台目より少々小ぶりである。それでも出来ないという。そこで、1台目の業者に依頼することになったのだが、あっさりやってくれた。最近の業者に中には全然根性がない人も多い。
こんなことで、開業後1年程度で2台の運用となり、ピアノデュオなども出来るようになった。
- 《ピアノの除湿》
ピアノ倉庫の除湿である。わからないから訪れる演奏家などに聞いてみると、ひどい人は20%台などという。厳密にこれと言うものはなく、まあ専門家でもこんなことはわからないのだろう。調律師さんなどにも聞き最終的には「50〜60%」で良いだろうと判断している。信頼できる調律師さんからは「急激な湿度変化は木材に割れなどが生じるので駄目」と聞いている。除湿機を入れたが下がらないので調べたら、換気口の影響で換気口も塞いだ。
昔は、常時運転の除湿機(電源を入れれば動き続ける)があった。そこに湿度スイッチを直列に置いて使用していた。下げようとすれば40%台まで下がった。湿度計も雑貨屋などの安物は駄目なこともわかった。ところが最近そんな除湿機はなくなってしまった。そこで今はある専業メーカのものを使っている。一般の家電系メーカのものはほとんど駄目である。業者に依頼しまともにやると大がかりになりお金もかかるのでこんな工夫をしている。
参考だが、通常の生活用の除湿機は健康への影響から適正な除湿値は70%となる(こんな事は知らなかった)のだが、これではピアノは困ると思う。タンクも直ぐに一杯になり停止してしまうので、必要な場合は自分で除湿機タンクを加工し、補助タンクを設けて、10日間ほどは水をためられるようにしたりしている。除湿に関しては随分と振り回されている。
- 《調律1》
ピアノは原則として月に1回程度は調律するようにしている。多くの利用者は調律を必要とするほどでもなく、かといって大きな狂いが生じていては申し訳ないと思うからである。あの方が使うからやっておこうかと言うこともあるし、希にだが自分に合わせてホールに自主調律をやらせようとする人が居るのだが、これには応じないことにしている。ピアノは「調律は好みの問題でもあり、調律が完全と言うことは絶対にない、弾いている間にも狂って行く、照明などの環境によっても変わるなど気にすれば際限がなく、細かいことまで気にするなら使う人が調律するのが当然の常識」と思っているからである。
ある行政のホールなどは調律は年2回などと言っている。使う人の使う人の調律もあるだろうから、何倍かになるだろうが、当方の原則は上記のようなものである。
- 《調律2》
どこかでピアノには「一括りに調律と言ってしまうが調音と調律がある、前者は主弦の音を整え、後者は副弦の音を整え響きをコントロールする」と聞いたことがある。これは私なりに正しいと思っている。弾き手にも依るだろうが、こんな事を考えたこともない弾き手も多いようだ。実際に主弦と副弦をピッタリ同じにしてしまうとポンという素っ気のない音になってしまう。
私の疑問点だが、極端に狂っているならともかく「弾きまくっている最中に微妙な狂いがわかる人はどれだけ居るのだろうか」と言うことである。平均律による調音、主弦と副弦の調和などなどの複合要素を考えれば、そもそもどれが正しいかわからないものを弾いているのだから、と思う。
当方では442Hzとしている。オクターブは倍々と音の高さが上がって行くので、声楽などではきつい場合があり440などを要求される場合がある。逆にヨーロッパなどの弦楽では響きがよいので443などもあるようだ。声楽に440などを指定された場合、演奏会後442に戻したくなる。当初は、戻しをお願いしていたのだが最近はそのままとしていることが多い。そもそも、短時間での戻しなどいい加減なもの(主弦だけいじる)、と思うからである。ただ、こんな事は極めて希である。
- 《調律3》
いろいろな調律師さんと接している。当方にもいろいろな疑問が生じるので、来た調律師さんに疑問をぶつけたり参考になる話を聞いたりする。でも、上述のように絶対的なものはないから、その答えもまちまちである。自己判断が重要となるだろう。
「?」と思う調律師さんも居る。私の方では調律開始の少々前には照明を当てて、極力弦温度を実際に近づけておく。それで調律してもらう。ある調律師が来た。こちらのピアノへの照明当てが少々間に合わなかったので15分くらい待ってからと指示した。中年の人だったが「どうして」と聞くので「照明を当てれば弦が伸び音程が下がるから」と説明した。15分位して調律を開始したのだが「本当に下がりましたね」などと言うものだから、二度とお願いすることはなくなった。
調律師さんから「途中の休みでは3割くらい照明を当てておいて下さい」と言われた。これは、その後参考にしてその通りにしている。
- ピアノ弦だが「どの位経過したら張り替えしなければならないだろう」と言うことは最初から気になっている。ピアノの利用状況や管理状況など様々な環境で一概には言い切れないのはわかるのだが、訪れる調律師さんに聞いてみるが、なかなか明確な答えは返ってこない。しかし、これも当然と思う。ある調律師さんからだが「複数弦が短期の間に切れるようになったら」と聞いたことがあり、今はそれを目安にしているのだが開業後20年経過し、まだそのようにはならない。
弦切れで実際にこんなことはあったり、聞いたりした。
- ある調律師さんだが「ペンチで折り曲げ切ろうとしても、ヨーロッパの弦は7回位はかかる、国産は2〜3回で切れる」と言うものである。時計の側の質も叩くと音が違い同じようだ。ある時、建物の移動を引き屋さんに依頼したことがある。ボロボロのワイヤーで引いている。雑談していると「国産のワイヤーは一度キンクするともう駄目だ、これはドイツ製だが大丈夫」などと言っていた。鉄には多くの異性体がある、ヨーロッパに宇宙から降った鉄は質が良いようである。
- 切れた弦の張り替えでも「いつになったら落ち着くのか」と言う問題がある。ある調律師さんは「1ヶ月ほどすれば落ち着く」と言っている。張り替えた直後などは、一度音程を設定しても数分でわかるほど下がってしまう。
- ある発表会中に副弦が切れたことがある。終了後先生から「何か途中でポンという音がした」と言うので調べてみたら、副弦が切れて飛んで落ちていた。
- こんなことで、万一に備え「弦を締めるピアノの調律道具(何というのかは知らない)」は買ってある。でも使ったことは未だない。
- ピアノ弦の全面張り替えなどは、時期なども考えながら相当の計画性のもとにやらなければならないことになるのだろうが、こんなことから入れ換えになってしまうのかも知れない。