「源流管理」と「後工程はお客様」
《PDCAを回せ、源流工程に最も注力せよ》
仕事にはPDCAという基本的な流れがある。C・Aを一括してS(see)と言う場合もある。この流れをきちっと守って(回して)仕事しなければならない。Pなど源流工程(川上工程などともいう)でしっかり考えない人は考え落ちを残し、後の工程でそれがわかり手戻りなどを多発させ、
- Q(Quality;品質;質のよい結果とならない)
- C(Cost;コスト;手戻りや直しでコストがかかる、人件費も含まれる)
- D(Delivery;納期;手戻りや直しで時間がかかる)を悪化させる。
良いところなしだ。源流でしっかり考えられない人間は手足人間でリーダーにはなれない。こんなリーダの下で戦争したら全員戦死である。これは、予測・予知能力ともいうべきものだ。
会社に限らず地域でも、何か行った後に「反省会」という会合が持たれるのだが、実際は「ご苦労さん会と飲食会」だ。私はこんな会合は極力遠慮している。本来ならば、次の仕事のスマート化のためにきちっと見直しや反省と行い、記録に残すべきものである。その後に「ご苦労さん会と飲食会」を実施するべきものなのだ。
源流管理(川上管理;逆は川下管理という)は一言で言えば「如何に急がば回れができるか」である、その実行には勇気が必要だ。期間がない仕事などで、源流で時間をとるには非常な勇気がいる。オーソドックスにやって期間に収まらなければ仕方がない、責任を取ろう、という覚悟が必要だ。先を急ぎたいのをじっと我慢して検討時間をとる。経験・確信・糞度胸等などがなければ、これはできない。経験があっても勇気のないリーダーは「急がば急げ」をやってしまう。それで考え落ちがあるのに気付かないままどんどんと進み、ずっと後(物が出来てテスト段階など)になって、それに気付くが手遅れとなる。大戻りしなければならないからだ。山歩きで道に迷い、正しいところがわかる時点まで戻ることに似ている。要領よく修復しようとして、安易にあちこち思いつくままに修復すると益々混乱してしまう。これは山歩きで、道を間違え近道で回復しようとして試行錯誤で適当に脇道に入り遭難するのと同じである。勇気や糞度胸のないものは専門だけ優秀であってもリーダーは出来ないのだ。智恵を絞り計画し、急がば回れに徹しても駄目だったものは「計画が無茶・無知だった」と言えるのではないだろうか。
昔、人事異動である課長から仕事を引き継いだら、川下管理の典型だった。部下がデザインレビュー(設計後の机上での検討会)を要求していたのに、それを認めずに機械を使ってのテストに強引に移行させてしまったのだ。馬鹿課長でそんなことを知らなかったのだろう。私が引き継いだ時点はテストの途中で、引き返すことも出来ず、止む終えずそのまま走らせてしまったが大変だった。お客からはクレームをつけられたが、当社の作業方法が悪いので我慢するしかなかった。次の仕事では、デザインレビューに十分な時間をとった。極めて後はスムーズで同じお客から感謝された。別の仕事で、徹底的なデザインレビューを部下に指示した。社内での実施は、いろいろと別の仕事の干渉が入るので、出張で合宿させた。帰ってきたので実施結果を聞くと「時間が不足で一部残して帰ってきた」という。「時間不足で帰ることが重要なのか、完全実施が重要なのか」といって再合宿させた。これは後はスムーズだった。仕事の中には、人間だから最初のトライアルで「そこまでは気付かないでも無理はない」というものも稀にはあるのは仕方がないことである。しかし「あのときもうちょっと考えていれば」ということが多いのは大問題である。
このデザインレビューなどは上司に事務系で見かけ上の利益中心者がいるとやっかいである。合宿費は金銭的に明確にわかる。ところが、デザインレビューなどで生んだ欠陥修正の費用効果というものは明確には出せない。設計の管理職の中にもめくらは居る。利益を出したと上にゴマをする人間も居るからである。製品出荷後の、修理でドンドン出て行く費用などは駄目会社の場合にはノーチェックである。儲けたつもりが儲かっていない結果となっている。
田舎への長期出張で交通の便が悪く、総務部門を説得しレンタカーを長期契約したこともあった。総務部門は「車は危ない」と言うので「夜道を社員が歩き事故にあう確率と事故を起こす確率とどちらが高いかわからないだろう」と反論したこともあった。歩いて往復1時間もかかれば、残業などもおまけも付けるだろうが、残業代とのトレードオフを部下に言い渡した。そんなことをしたら、それが前例になって、その後はスムーズにレンタカーなど通るようになった。これも生産性である。
私は多くの建物を建築してきた。設計士さんの設計段階ではあれこれ注文をつけたり注力する。しかし、それが決まってからは余程のことがない限り変更は我慢する。難しい山歩きで、綿密な検討のもとにコースを辿りはじめたが、気分が変わって別の道ということはできない、下手をすれば遭難である。
《後工程はお客様》
大好きな言葉である。最も重要なものの一つである。
「お客様を大切に!」と誰でも・どんな企業も言う。企業というものはこれだけでは駄目なのだ。企業が製品をつくる場合、企業内の異なる部署の人の手を通る。即ち「工程」がある。
単純に示せば、
- 市場調査や製品企画、販売企画
- 設計(概要設計→具体設計)
- 製造(製造→社内検査→顧客検査)
- 販売(直販や委託)
- サービス
などである。各々の工程の中にも様々な内部工程がある。いろいろな工程には下請けの存在もある。後の工程に行っては見たが、前の工程の質が悪く、前に戻ることもある。各々の中にもいろいろな工程がありいろいろな部署や人を経由して製品が市場に出て行く。サービスは最終の終わり工程ではなく、そこで得られた情報は再度企画に回り、新しい製品の産み出しや改良にフィードバックされてゆく。
外部のお客だけでなく、社内の後工程(仕事を引き継ぐ職場)・下請けへの後工程もお客と同じレベルで考える必要があるのだ。この精神が手戻りを減らし、社内も効率化する。質の悪い結果を次の人に渡せば必ず後の工程でトラブルを起こし、自分に戻ってくる。自分は既に次の仕事に移っていれば、その仕事の中断となり新しい仕事の品質の低下となるなど悪循環を生む。自分の不始末を次ぎに押しつけ、結果は手戻り、という次の工程・自分の工程・企業全体への罪悪だ。このような人とは何事も一緒にやりたくない。
これは製品の質だけでの話ではない。仕事の質が製品の質を生む。製品と言っても、メーカが作る物だけではない。製品=仕事の成果物であるからあるから、事務系であろうが何であろうが必ずあるものである。事務系は自分達には関係ないと思ってはならない。
こんなのも後工程である。人Aが複数の人に依頼し回答を待っている。期限ギリギリで回答する人も多いだろう。一人でも回答が届かないとAは次のステップに進むことが出来ない。回答期限があるとは言うものの、私は極力早く回答することを心掛けている。何故ならば、全員の回答が早ければAは次のステップに早く進むことができると考えるからである。その結果が、また自分に戻ってくる場合もある。このようにしてどんどんと余裕期間を増やすことがスムーズな仕事の鉄則である。何かトラブルが生じても余裕期間があれば後の工程や客に迷惑をかけることもなく対処もしやすい。常習的な期限ギリギリの回答者は私は大嫌いである。依頼される側のことを考えない自分勝手な人と言えるだろう。