適切な補聴器を使用しないと惚ける
自分もその年齢になり、最近こんな風に思うようになった(2007年頃)。まず、こんな書き出しからはじめよう。眼鏡をかけると世の中がキラキラと見える。音の世界も補聴器を使うと同じであると言うことである。
こんな風にしていると惚けたり、惚けが加速すると言うことなのだが、
- 聴力を補聴器などで補っていない、
- 合ったメガネを使っていない、
- 人の話を聞けない、意地だけが残っている、
などである。私なりにこんな点を記述してみたい。
《耳》
老人が惚ける原因に耳が遠くなるがある、と言うのを実感するようになってきた。耳が遠くなるのは徐々にだから、実感しにくい。何故ならば、長年かけて徐々に遠くなるからであり、世間から音が消えて行くことが極端にならないとわからない。聴覚の不自由度は眼よりは鈍感と思うからである。多少耳が遠くなっても生活にはあまり不自由しない。特に、こんな条件の時には人の話が聞きにくくなってきた。
- 小声でしゃべる人(高い声でも)、
- 声が低い人、
- 残響が多い部屋、
などである。条件が重なった場合には、一層聞きにくい。多くの老人は、このような場合聞こえているふりをしている。それは「人の話を聞いていない→頭が回っていない→反応も出来ない」ということになり惚けの要因をつくってしまうように思う。老人同士は皆声が大きいから大丈夫だ。だが、音として聞こえていても、頭は聞いていないことが増える。
60代後半になり、生産性のないいやなものが多いのだが、地域会合への出席が多くなってきた。老人同士はお互いに遠いから、大きな声でしゃべるので、内容は別にしてほぼコミュニケーションは大丈夫である。若い人はよく聞こえるので、小さな声でも十分に聞こえているのだろうが、老人にはつらい。必死に聞いているのも疲れることである。
・・健康診断で・・
いい加減な(と言っては先生に申し訳ないが)健康診断は以前から続けているが、数年前から「少し多くのお金は払っても」と妻と共に大きな病院で「まち」の医者よりは丁寧と思われる健康診断に訪れるようにした。2008年1月、間もなく67歳、聴力検査を実施した。「年齢相応に耳が遠くなっていますね」と検査の先生が抽象的に言う。今までは「そうですか、年齢だから」と疑問も感じずに帰ってきた。今回は、聞こえにくさがかなり増したと感じていたので、先生に「どのように聞こえにくいのか具体的に知りたい」と言うと、横軸周波数、縦軸デシベルの私の聴力グラフを見せてくれた。以前から聴力検査は実施しているのだが、こんなものは見たことがなく、最初からこれを見せて説明してくれればと先生に言った。
テレビで知識を得たのだが、こんなことは知っていた。
- 老人になると、音が聞こえにくくなる(正確な説明は難しいが、一般的に何となく理解できるだろう)、
- 高い方がより聞こえにくくなるので、人の声の特徴をとらえにくくなる・声がもわもわと聞こえる(理由:声(音色)は基本の周波数とその2倍・3倍・・・・・のように複数倍数の高調波よりなり、声の特徴は高調波からなる。これが聞こえにくくなるので特徴がわからなくなる・もわもわに聞こえる。)、
- テレビなど聞いていると、アナウンサーの声はよいのだが(声の特徴も聞きやすいことを前提に選ばれた人だし、訓練されているから)、一部の一般の人のしゃべる話が聞きにくいことがしばしばある。ドラマなど見ていても、ある俳優の声が聞きにくい、などである。
全体的な聞こえの悪さはともかく、私の場合1000Hz程度になると20dB(デシベル:後で説明する)の劣化らしい。もっと高音になると30や40である。ドンドンと悪化するだろう。感じ方はそうではないのだが、この私は技術者の端くれでデシベルは知っているから、これを見て「(必要に応じて)もう補聴器を使わなければ」と思いながら帰ってきた。
帰ってきて、インターネットで補聴器を調べていると、年齢に応じた耳の感度が記されていた。私の年齢になると若い人に比較し、全体的にも20dBも劣化しているようだ。それでは高音域は40dBの劣化になる。聴力などは、20dBの劣化とは、感度1/10のことなのだが、これしか感度がないから、1/10弱く聞こえるでは大変困るのだが、実際に感覚的にはそれほど極端には感じないはずである。
・・補聴器の調査と選択・・
さて、補聴器をインターネットで調べてみた。大別して、ポケット型と耳掛け型がある。将来は別として、私が補聴器を使いたいのは、会議で聞きにくい場合だけである。そこで、ポケット型にした。
ポケット型は、大きいが(カバンを持って行動する場合が多いので私には不便はない)、廉価・電池が安く長持ち・扱い易いなどがあり、今の私にはこれで十分であるからである。いずれは、耳掛け型が欲しくなるのかも知れない。ただし、電気屋で凝り性だから、低音域・高音域などの増幅に調整がきくものを選んだので少々高価になった。デシベルについてはインターネットなどでお調べいただきたい。
小さく耳に入る程小さい高価な補聴器だが、これは惚け老人にはそもそも難しい。小さくてなくすし、どこに置いてあるか年中探さなければならなくなるし、電池交換、調整などなど介護者や医師の手を煩わせるようになる。後々金もかかる。喜ぶのはメーカと医師だろう。仕事している頭がまだまだの老人なら必須だが、家にいる老人には補助であるから、結局面倒で使わない。惚ければ結局使えない。
・・2012年追記・・
今までの補聴器はポケット型の片耳のものだったが、2011年にポケット式で両耳のものを追加した。まれに行く音楽会でまともに音を聞けないのでは何のために行っているのかわからないからである。これもポケット式で両耳にマイクも付いているので音の方向性もわかる。音楽会場に行くと「補聴器をお付けの方は(ピーというハウリング音が出ないように)しっかりお付けください」と言うアナウンスがあった。こんなアナウンスは初めて聞いた。こんなところにも、老齢化社会を感じる。今までモワモワして聞き取りにくかったアナウンス嬢の案内も「こんなにクリアに聞こえるものか」と思った。
演奏そのものより、アナウンス嬢の声の方が補聴器の効果がはっきりわかる。 と言うことは、演奏は結構アバウトに聞こえていてわかなない、と言うことでもある。音楽ホールは残響が大きいので、演奏ではわからなくてもアナウンス嬢の声は聞き取りにくいのだ。いい加減な付け方をしておくとマイクとスピーカが至近にあるので音響的に結合し発信して「ピー」とハウリングを起こし迷惑なのだ。若い人にはバイブレ音も聞こえるようだ。音楽会に一緒に行った娘に注意されたことがある。補聴器注意の話をある若い人にしたところ、私も最近初めてそんな注意を音楽会場で聞いた、と言われた。
音響機器などいじってみるとイコライザーという機能がある。パソコンの音楽ソフトにも組み込まれている。老人用には一般的には高音部を上げておくのがよい。しかし、これも十数デシベル程度のアップに過ぎない。いろいろテストしてみたのだが、結局自分自身の補聴器で補わなければならないのだ。
《書きながら思い出したがこんな経験がある》
- 残響で録音不良
・・・ある1000人の収容が可能な音楽ホールで大会講演があった。私は55歳くらいだった。講演を録音して、それを記録にする必要があった。会場で耳で聞いていた範囲では十分聞き取れていたので安心していたのだが、録音テープを聴いたところ「何をしゃべっているのかほとんどわからない状態」であった。幸い講演者の原稿をもらっていたので、事なきを得た。この時、大きな音楽ホールの残響とはこんなものなのか、と思った。考えてみればバイオリン1本でも響かせるためには残響なしでは駄目なのだ。こんな会場での録音はマイクを直接録音しなければならないことがわかった。
- モータ音影響で録音不良・・・人から録音を依頼された。ポータブルの録音装置の上に、マイクを乗せて録音していた。後で聞いてみると、モータ音を拾ってしまって、録音不良だった。今の機器はよいのかも知れないのだが、昔の機器は駄目だった。しかし、今の機器でもテープ式は気をつける必要はあるだろう。
テレビだけ受け身で眺めている老人が惚けやすいと思う。文字は読む意思がないと読めないが、テレビはボーッと眺めていても少しは情報は入り楽だから、こちらに流れやすい。合っていないメガネなどを無理して使っていると「文字を読もうとしてもつらくて集中できない・いい加減になる → 頭を回さない → 惚ける」と思うのである。怠け者は惚けると言うことだろう。
昔は良い補聴器も眼鏡もなかったが、寿命が短かかった。今は寿命が長くなった。その分惚け老人は増えるのでは社会も若い人もたまったものではない。金はかかるが良い道具を積極的に使うよう老人にし向ける必要がある。
・・2012年追記・・
テレビで見るのだが、田舎で80代や90代で元気な老人達を見る。何故?と考えてみると、こんな事が頭をよぎる。都会のサラリーマンは引退してしまうと、急激に何もなくなり、時間をもてあまし、ボケッとする場合がある。趣味をやりたくとも、年金でもたっぷりもらっている人は良いのだが、金もなければ動けない場合がある。ところが、田舎の老人達は近所付き合いというコミュニケーションもあるだろうし、仕事の中心は若い世代になっていても、老人にできる手伝いを続けていて仕事から離れていない。