ディジタルとアナログ
最近はほとんどがディジタルの世界になってきました。アナログ(analogue)と言うのは「似ている」という意味ですから、元々の連続的な波形を忠実にあるいは単純な変形で送って行くものと言えましょうが、ディジタル(dijital)という辞書をひきますと「手の指」などと書いてありますから、デコボコというのか間歇的というのかちょっと違う雰囲気で送って行くものと言えましょう。なぜ、こんなものが出てきて発展してきたかですが、アナログでの伝達というのは結構大変なのです。詳述は避けますが、LSIだけではなく、コイル・コンデンサー・抵抗器などなど様々な不品を多量に使用しなければならないのです。一旦、ディジタルにして数値で伝達できれば、LSI主体で済みます(完全にLSIだけとは行きませんが)、そうなれば進歩した安い小さいコンピュータチップを利用でき、何もかも良いことが実現可能です。
- 音の世界のディジタルは「サンプリング定理」というものでなっています。これは、例えば、1000Hzの音のサンプルをとって、そのサンプルから元の音を再生しようとした場合、1000Hzの倍の1秒間に2000のサンプルをとればよい(サンプリングレート)、と言うものです。
- CDなどにサンプリングレート44100などと書いてあるのは、半分の22050Hzまでの音は理論的には拾えると言うことです。さらに、音には大きさがあり、128などと書いてあるのは、+と−方向に大きさは128段階でとっていると言うことです(16bit)。さらに、ステレオでその倍、と言うことになるので、1秒間に44100X16=705.6kbit(88.2kbyte)の記録量が必要と言うことになる。これが更にステレオで倍の176.4kbyte/秒、音楽CDなど1時間ほどの演奏だから、176.4X3600=635.04メガバイトと言う概略計算になります(実施には制御ビットもあるので少々増える)。
- PCMと言う言葉を見たことがあるでしょう。音のサンプルをとった瞬間は、音の大きさというものは電圧でわかります。電圧を数字に変えて以降の処理を行うのです。PCM=Pulse Code Modulation(パルス符号変調)と言うことです。
- 普通の人の耳は8000Hz以上は聞こえないなどと言いますから、サンプリングは毎秒16000位でも良さそうですが、音楽CDなどでは微妙な音色を要求されるから安全を見ていると言うことでしょう。なお、普通の電話などはサンプリングは毎秒8000だから、4kHz以上の音は拾えないことになっています。
- 理論的にはこう言うことで、ディジタルでもアナログでも機器が完全に音を拾えて、完全に再生できるならば、音色は同じと言えるでしょう。
ただ、ディジタルの場合には、0.XXという値は存在せず上下のどちらかの値になり、音に変化が生じてしまう、アナログのレコード針やヘッドなどはある質量を持つものだから鈍りがある、真空管のアンプなどもトランジスタ系との特性の微妙な違いから差異があるのかも知れない。ヒョッとするとアナログの方が鈍りがあるのかも知れない。アナログ好きは、それを感じることが出来る耳を持っていると言うことなのではないかと思う。所詮、良し悪しではなくなじみの問題と思えてなりません。
- ディジタルとアナログという話ではないが、耳が肥えている聴衆を集め、舞台には見えない幕を引き、ある時は本物のオーケストラ、ある時は高度な音響措置、と言うことで演奏を実施し、判定させたところ、正確な判定をした人はわずかだったという話を聞いたことがある。最近では残響の調整のために、天井などに音響装置を忍ばせているホールもあるようである。
- 途中でPCM=Pulse Code Modulation(パルス符号変調)と言う言葉が出てきてしまいましたので、変調と復調について簡単に説明しておきます。その前に「搬送波」というものを説明します。音波というものは周波数が低く、電波では飛びません(正確に言えば飛ぶんですが、放送には利用できないということなのです)。音や情報を乗せて飛ばす、搬送波というものが使われます。これがラジオなら590kHzと言うものです。この上に音などを乗せます。どんな形式にせよ、情報というものは電気や電波や光の波で送るものです。波というものは複雑な形状ほど多くの情報を乗せることができます。ですから、研究者達は如何に多くの情報を乗せられるかの研究を続けています。
我々の身近なもので話しますと、
- まずAMラジオがあります。AMとはAmplitude Modulation(振幅変調)と言って、音に合わせて搬送波の波の形を変えて送ることによって音情報を届けているものです。
- 次に出てきたのはFMラジオと最近なくなったアナログテレビです。これはFrequency Modulationと言って、電波の大きさは変えずに波の周期を音に合わせて変えることによって情報を届けているものです。
- いろいろな変調というものは考えられていたのでしょうが、それを実現する部品などを考えますと実用化困難と言うことだったのでしょう。
- ディジタル化が進み始めPCMなどが出てきました。説明は省略しますがPAM(Pulse Amplitude Modulation)とかPWM(Pulse Width Modulation)なんて言うのもあります。PCM化の途中にはこれらが介在します。
- さてPCM化された情報をケーブルや電波で送ろうとする場合ですが、搬送波は勿論あります。メチャクチャに電波帯を使うわけには行きません。ある電波帯に情報を収めなければなりません。電波の波を変える方法にはPM(Phase Modulation:位相変調)と言うものも使われます。岸壁に波が打ち付けられているのを眺めていると、波は打ちつけられた瞬間に反射して相を変えます。電気的に相を変えて情報としてあげるのです。ディジタルテレビは何かと言いますと、位相変調に依ってディジタル情報が乗ったアナログ電波が飛んでいると言うことなのですが、頭が混乱するでしょう。1と0が電波で飛び交っているなどと単純に考えたら大間違いです。飛んでいる形は全然違います。
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知識ある同志の会話の中で時々「ディジタルも所詮アナログなんだよね」という会話が飛び交います。数学的・理論的にはディジタルもアナログ波の複合物なのです。
- 最後に変調に対応する言葉に「復調」があります。人間にわかるように直してあげることです。モデムなどと言いますがModulation(変調)、de-modulation(復調)を共に備えた機器を一言でモデム(青字だけを発音)と言うのです。
- 思い出したので追記しますが、アナログテレビとディジタルテレビの電波障害というものは違うのです。電波が来ないところはともかくとして来るところの場合ですが、アナログテレビの場合はゴーストと言って画像が二重になっていたりしました。位相の異なる波が重なり合った結果です。ところがディジタル放送の場合には大方「見えるか・見えないのいずれか」になってしまうのです。変調方式の違いです。