オーディーオとビデオ機器の基礎知識

 下記に記述したようなことがわかりますと、とんでもない接続をしたりはなくなり、こことここは間違って接続しても大丈夫などの判断ができるはずです。間違った接続で機器を破損したりもなくなるでしょう。

番号 タイトル 説 明
1 電気と電力
    基礎的な説明範囲ですが、
  • 電気には電圧(Voltと言ってVで表します)と電流(Currentと言ってIで表します、だだ数値で表す場合はA(アンペア:ampere)という単位で示します)があります。

  • 電圧はよく水力発電所などの水が落ちる高さになぞらえます。電流は水の落ちる管の太さ(水量)になぞらえます。

  • 電力(Wattと言いWで表します)は「W=V×I」で、これが物を動かす力になります。

  • 電気が流れる導線などには抵抗(Resistanceと言ってRで表します、ただ数値で表す場合はΩ(オーム:Ohm)という単位で示します)というものがあります。電気の流れを阻止する力で、V=R×Iの関係があります。ですから「W=V×I=R×I2」と書くことも出来ます。

  • 実際の電気機器には、この他にもキャパシタンスやリアクタンスなどなど複雑なものがあり、後述します。

  • 例えば、100Wの電球の場合は、100Vの電圧の元では1Aの電流が流れます。空調機などはこの10倍以上の電流が流れます。

  • 家庭で使う電気は100Vや200Vです。高圧送電線などは何十万Vです。

  • 上に抵抗というものを出したのでインピーダンス(impedance)と言うものにも触れておきましょう。電線などすべてのものには抵抗(R)があります。銅線が多用されるのは抵抗が少ない安い金属だからです。ところが、インピーダンスという言葉もよく出てきます。電気の流れに影響を与えるものには抵抗の他にインダクタンス(inductance:Lで表します)と静電容量(capacitance:Cで表します)という3要素があります。
     以降は必ずしも正確な説明とは言えませんが、原理的で簡単な説明です。例えばトランスですが、ある種の鉄心に銅線がぐるぐる巻かれています。しかも入力側と出力側に独立した別の線が巻かれています。入力側に直流を流す場合には、この抵抗はRです。トランスの出力側に電気は発生しません。ここに交流を流す場合は抵抗はRだけではなくなります。磁芯の抵抗(交流が流れると鉄心の磁界の方向変化がありますがその抵抗:ヒステリシス)と出力側に接続した負荷の影響が現れます。また、ぐるぐる巻いている線にもLがあり、線の間にも電気が空中を飛んで抜ける道(C)が存在しています。ですから抵抗というものを厳密には直流だけの場合で表すRでは表現できないのです。R,L,Cの総合的なもので表現しなければならないのです。それでインピーダンスという言葉を使います。このインピーダンスというものは周波数により変化します。インピーダンスは抵抗を含むものです。トランスはLの塊、コンデンサーはCの塊みたいなものです。
     電子機器中にはこのRLC要素(抵抗・インダクタンス・静電容量)が多量に使用されており、組合せ方で変調・復調・フィルターなどなどの機能を実現しています。測ったことはありませんが、スピーカなどはインピーダンス6Ωなどと書いてあります。しかし、直流で測ってみればもっと低い抵抗なのではないかと思います。
2 入出力の信号とレベル
    機器の中ではいろいろな信号レベルが使われます。人に音を聞かせるようなスピーカは「大きなW」という力を必要としますが、機器間などはWの小さい、必要最低限の電気で良いので、いくつかのレベルが設けられています。

  • ライン入力から入りましょう。ライン入力の基準値は「320mV」です。1mV=1/1000×Vですから、0.32Vです。機器間はこの位が良いのです。

  • マイク入力は、マイク入力は 0.6mV であり、ライン入力の1/500程度のものです。マイク自身の特性で高い電圧が出せないのです。ですから、マイクをライン入力に接続するような場合には電圧を500倍も上げなければならないのです。ただ、マイクにも様々なものがあり、給電を必要とするもの、必要としないもも、発生電圧が異なるものなどです。調べて使用する必要があります。

  • この二つの入力というものは、機器間で電圧(の変動)さえ正確に伝達できればよいので、力(Power)はほとんど必要ありません。

  • 機器には自分が持っている抵抗「内部抵抗」というものがあります。自動車のエンジンや発電機なども自体の内部にいろいろな摩擦抵抗などがあるのは何となくわかるでしょうが、電気機器も同じです。

  • 内部抵抗が大きなものは、外部に大きなWを伝えられなくなります。上の自動車エンジンで自分の摩擦が大きかったら、走行に出せる力が減るのと一緒です。エンジンも過熱しますが、電気機器も同様に加熱します。

  • 上の二つの信号の場合は、電圧の変動さえ正確に伝えられればよいので、内部抵抗600Ωなどの高いものの方が都合が良いのです。V=R×IですからIが関係ない(小さくて良い)からRが大きい方がVも出ます。「定電圧源」などと言います。

  • ところがスピーカだけは違います。抵抗は数Ωです。大きなWを出さなければなりません。そのためには内部抵抗の小さな出力でなければならないのです。「W=V×I=R×I2」ですから、Wを大きくしようとすると電圧を上げるか、電流を上げなければならなくなりますが、だからといって電圧を上げるのは危険なので、電流を上げようとします。そうするとRの小さなものが必要になります。こちらは「定電流源」と言います。
    例えば100ワットの出力が出ている8Ωのスピーカがあるとします。「W=V×I=R×I2」から100=8×I2ですからスピーカにかかる電流としては3.5アンペアほどで電圧は28ボルト程なのがわかります。10ワットなら電流は1.1アンペアほど、電圧は9ボルト程度になります。こんな計算したのは私も最初です。

  • スピーカを並列に接続する場合などがあります。出力側の内部抵抗は変わりませんが、出力側から見たスピーカ側の抵抗は並列接続により減ってしまいます。こうなりますので、スピーカは多くのWを吸収しようとするのですが、出力側の内部抵抗があるので思ったようにパワーは増えません。自動車に荷物を沢山積んだ状態でエンジンに負担がかかった状態ですね。
     スピーカから100Wの音を出そうとした場合、アンプ側では最低でも同じ電力を消費し発熱します。

  • ノイズの影響について言及しておきます。機器間を接続する導線には照明その他から出るノイズ(雑音)が乗ってしまいます。いろいろ導線の工夫をしても零にはなりません。こんなことで、信号のレベルの低いマイク入力などはノイズの影響をより多く受けます。最近の照明装置はチョッパーなどと言って、半導体で電流を小刻みにON,OFFして電力を減らすものがありますが、これも一つの大きなノイズ発生源になります。
3 プラグなど
  • 接続をしようとしますと、いろいろなプラグが必要になります。これはインターネットなどで調べてください。機器側はメス、コード側はオスが原則ですが、いろいろな種類があります。
  • スピーカだけは普通の電線ですが、これは電力を必要とするので太いものが必要だからです。太いものは抵抗が少なく発熱が少なくて済みます。線の発熱(損失)も「W=V×I=R×I2」です。使用するワットを2倍にしたいときに、電圧を2倍にする、あるいは電流を2倍にするなどがあるのですが、前の式から電流を2倍にするとから、R×I2から線での損失は4倍になってしまいます。送電線を高圧にするのは電圧を増やした方が途中の損失が少ないからです。こんな理由で空調機などには200Vを使いたいですね。発熱は家にも危険です。
4 機器が小さくなった理由
  • 最近のテレビは薄くかさも少なく、重さも軽くなりました。音響機器もこんなものでと思うほど小さくなりました。テレビ画面などは液晶などのおかげですが、内部はLSIの高集積化とディジタル化のおかげです。ただ、人間がさわったり見る部分はむやみに小さくは出来ませんから、中ががらがらの機器などもありますね。
  • しかし、小さくなった、中はがらがらになった、という反面テレビも音響装置もいろいろな機器との接続要求から、接続端子は複雑になりましたね。同じようなテレビでも多様な接続が可能なものからシンプルなものまで様々です。あれこれやろうとする人は、ポンと買ってくることもできなくなりました。
  • ここまでも述べたように、パワーを必要としない部分は電気情報さえ伝達できれば良いのですから、これからももっと小さくなるはずです。電気機器は内部での電気の走行でいろいろ仕事をしています。小さくなって電気の走向距離が短くなれば、処理する速度も早くなります。20年前のパソコンなどはCPUクロック20MHzなどと言っていましたが、今は普通のものでも100倍ほどの2GHzなどとなっています。早くなった多くの理由はLSIが小さくなったことです。小さくなれば省エネでもあります。
  • 電線中に電気が流れる速度ですが、光の70%とか1メートルが5ナノ秒(nano=10億分の1=1/109)などと言われています。2秒ほどで38万kmの月まで届く速度です。発電所までは数百キロメートルでしょうから、発電所で発電された電気はあっという間に届きます。