概略理解
- 《2011年より完全にディジタル化》
地上波(地上の電波塔から電波が発信される放送)TVの場合、従来はVHF(Very High Frequency)という電波帯とUHF(Ultra High Frequency)の一部の電波帯が使われてきたのだが、ディジタル化に伴いテレビはUHF(Ultra High Frequency)という周波数の高い周波数領域に移行することになった。このためにVHF帯のテレビはUHF帯に移行しなければならなくなったが、国家事業で短期間の切換は困難であり移行期間を2006〜2011年の間の5年間とり、この間は従来のVHFと新たなディジタルテレビのためのUHFの両方の電波を送り、ある期間はどちらでも見られる状態にして、この間に視聴者が切り替えることになった(サイマル(同時)放送:これは和製英語で英語ではsimulcast=simultaneous broadcast)。旧放送は2011年に停止されるが、切換を放置しておいて、テレビが突然見えなくなり、あわてる人も出るだろう。
- 《ディジタル放送はメートル波》
周波数というのは1秒間の電波の振動数である。UHFの一番下の振動数は300MHzだから1秒間に300×1000×1000(3億回)である。何故3などの数字が出てくるかと言えば、電波(光は電波(電磁波)の一種)の伝搬速度は約30万キロメートル(30×10000×1000メートル)で、振動数で割れば、一つの波は丁度1メートルになり、メートル波と言えるから、ここを呼称の切れ目としている。
- 《情報が沢山送れるようになった》
地上波テレビ領域で使われる1つのチャンネルというものは6MHzの幅で割り付けられていて、従来のアナログのテレビでは1つの放送が、この幅を全部使っていたのだが、技術進歩で一部の帯域で済むようになっているようだ(現状は全部使っているようだが)。帯域の幅は、そこで送れる情報量を決定してしまうのだが、昔と今では技術進歩で1チャンネルで送れる情報量が全然違うのである。自動車で言えば、車間距離をどんどんと詰めて、同じ道路でも沢山の車を流せるようにしたようなものである。
- 《チャンネルという概念が変わる》
そこで、この6MHzを更に、12のセグ(segment)に分けて、4セグで従来のテレビ相当の画像や音を送れるようにもなっているらしい。この結果、1チャンネルで標準放送(SDTV;Standard TV;今まで見てきたアナログテレビ相当)なら3放送を送れるようになるらしい。チャンネルと放送局は対応しているから、1放送局で3種類のSDTV放送が同時に送れるということである。
画像の質が高いハイビジョン(外国ではハイ・デフィニッション;HDという)テレビでは、4セグでは不足し、12セグを使用するので1放送(緻密な画像を見ようとすれば情報量も増えるので帯域幅を広くしなければならない)しか送れないことになる。ハイビジョンなどと外人に言ったら、どんなことを想像するだろうか。「高い位置にあるテレビ」なのだろうか。サイマル放送と同様、和製英語には注意する必要がある。
帯域幅6MHzのチャンネルという概念は、そのまま残していて、チャンネル番号(テレビのチャンネル番号ではなく、電波帯に設けられた番号)というものは変わっていないのだが、これを一般視聴者が意識することはないだろう。地上波ディジタルテレビには13〜62までの50チャンネルが割り当てられている。
こんなことで、今までのテレビは「チャンネル番号=リモコン番号=放送(局)」だったが、ディジタルTVでは「電波帯のチャンネル番号はリモコン番号ではなく(対応はしている)、リモコン番号は放送局番号で(対応している)、1放送局=1放送ではなく複数放送に対応(する場合がある)」というようなことになっている。
- 《衛星放送》
これもちょっと重要なことなのだが、衛星放送にも触れておく。これがわかっていると、TVとの諸々の接続の役に立つ。
BS衛星放送では12G(ギガ)Hzというように、MHzの更に1000倍の周波数(1GHz=1000MHz)の電波が衛星から飛んでくる。この電波帯の電波をケーブルなどで扱うのは通常の家庭電化製品では技術的にも経済的にも難しい(減衰が大きい)から、アンテナで受けた受口で、一桁低い周波数に変換(周波数変換;約1.3GHz)して電化製品に送り込んで利用している。この変換には当然電気を使うから、衛星アンテナには給電が必要になる。衛星にはCSなどもあり、アナログ放送も、ディジタル放送もある。一般の衛星は電波を受けて、増幅して送り返す機能が基本の素通りだから、通っている電波が何だかわかっていないはずである。アナログ情報が通ろうが、ディジタル情報が通ろうが、関係ない。
・BSは「Broadcast Satellite(放送衛星)」CSは「Commercial Satellite(商業衛星)」である。
・BSではおおよそ11.7GHz〜12.2GHz帯、CSでは12.2〜12.75GHz帯の電波を使う。
・BSにはch1,3,5,7,9,11,13,15の8チャンネルがある。
・衛星ディジタル放送に割り当てられるchは、
BS1(TV朝日系、TBS系、その他) その他は「音声とデータ」用
BS3(WOWOW、テレビ東京系、その他)
BS13(日本TV系、フジTV系、その他)
BS15(NHK-HV、NHK-BS1、NHK-BS2、スター、データ)
・衛星アナログ放送に割り当てられているchは、
BS5(WOWOW)
BS7(NHK衛星第1)
BS9(MUSE-HV)
BS11(NHK衛星第2) いずれ、これらは空くから何かに使われるのだろう。
となっている(これをインターネットで探すのに苦労し、なかなかわからなかった)。これで、リモコンのアナログ衛星放送選択に5,7,9,11などがあるのがおわかりだろう。衛星の場合は、1チャンネルが帯域50MHzなどと幅広いから、複数のchを(多分地上で)混合して衛星に送り、そのまま衛星で中継して地上に送り返しているのだろう。
衛星から来た電波は、前述のように周波数が高くケーブルの伝搬には減衰の支障が出るので、これを中間周波数と言って、アンテナ受信部で、一桁低い周波数に変換してしまう(前述)。更に、これをCATVなどに乗せる場合は、CATVチャンネルに合うようにUHF帯の適当なチャンネル(百番台)に周波数変換して乗せているようだ。
- ここで不思議なのだが、テレビやレコーダにはVHF/UHFとBSの別のアンテナ入力、最近の装置では地上ディジタルの3つのアンテナ入力がある。同軸ケーブルで50〜700MHz(VHF/UHF)と1.3GHZ(1300MHz;BS)のように混合され入ってくるならあまり離れた電波帯でもなく、複数に分ける必要もないように思えるのだが、何故かわざわざ分岐装置などを入れてやらなければならない。過去の遺産か古い機器を融通性を持って使うための接続の自由度を保つためのものなのだろうか。最新型設備(TV、DVD recorder)同士の接続なら一つだけの入力でも済みそうなものなのに???。
こんなことが、まずわかっていれば、後の理解は容易になるだろう。図は示していないが、自分で図でも書きながら上を見ることが容易に出来るだろう。電気屋の私でありながら、最近のテレビ・レコーダ・音響機器の相互接続は何となくわからなくてモヤモヤしていたところがあったのだが、以上がわかっただけでかなりすっきりし、これら機器の接続は説明書をあまり見なくとも平気になった。「まち」の電気屋さんは一体どこまでわかっているのだろう、という疑問も出てきた。