入院と手術

入院前
(2005年10月
以前)
    手術前の私の状態はこんな風である。
  • 尿意を強く催し、トイレに行こうとする。漏れそうになって一生懸命尿道を絞め、トイレに向かうことが時々ある。ところが尿量は大した量ではない。間に合わないことは今までほとんどなかったが、冬にこんなことは多くなる、歳のせいかと思ってきた。
  • たいした残尿ではないが、冬には残尿感が高まる、全部出したつもりでトイレから帰ってきても、またトイレに向かうことがある。冷えると膀胱の収縮が高まるような感じを持っている。これも歳のせいなのか?こんなことで、最近トイレではいきまず出終わったと思うまで自然体で少し時間をかけるようにしている。
  • 脱肛があって年に数回押し込むことがある、朝早い出発などで大便トイレを我慢するとこうなる場合が多い、
    などである。
1日目
《術前3日》
  • 手続きし10時頃部屋に通される。午後CY先生が訪れ、助手の先生と診療室で実際の手術の画像(腹腔鏡を使用しながら手術している腹部内部の様子)をパソコンモニターを見せられながら手術の説明を受ける。この時に前述のホルモン使用→癒着の話が出て1時間ほど手術は延びるでしょうと言われる。懇切丁寧なお話しに恐縮していると「昔は、医者がこう考えたのだから、こうするで済んだが、今はそうはゆかないので」とおっしゃっていた。
  • 手術後の失禁について、それまでの手術事例を元にお話しいただいた。術後、直ちにあまり問題ない人もいるし、時間の経過で良くなって行く人もいる。短時間の人もいれば、1年のようにかかる人もいる。少しの漏れも気にする人もいれば、そうでない人もいる、最終的には九十数%が問題なくなっている、と言う話しを聞いた。何回かお話しいただいた内容の再確認である。
  • 切除手術で完全に取りきったと思っても数割程度は再発する場合があるということである、
  • ホルモン剤は、入院数日前から飲むのをやめていた。根絶治療をしようとしているのだから必要ないと自己判断したものである。
2日目
《術前2日》
記憶が薄れたが、こんなことのようだった。
  • 尿の測定(自分で)・・・今まで私の1回の尿量はどの程度のものかは量ったこともなかったのだが、入院後尿を貯めるよう(その人の特性把握のために)要求されたので約300ccであることがわかった。看護士さんから聞いたが多い人だと400位なようだ。
  • 肺機能のテストをした。全身麻酔との関係だろう。思い切り息を吐き出す。肺活量は4200程らしい。若い頃は5000は超えていた。
  • 胸部レントゲン写真をとった(ように記憶している)。これも麻酔との関係だろう。
  • 血液採取を実施した。
3日目
《術前日》
陰部の剃毛実施、食事が術前用になってきた。物足りない。当面入れない風呂に入る。夜下剤飲まされるが錠剤で効果なし。
余談だが、ニュースキャスターの鳥越さんの入院が報道されたのをテレビで見た。
4日目
《手術》
  • 午前中、液状の下剤を飲む、午前中に浣腸(100cc)と抗生物質2錠飲む、これで胃腸の中はほとんど空のはずである。
  • 午後手術(1〜6時)。手術室まで点滴を下げながら歩いて行く。これで二度と目が覚めない人も居るのだなと思いながら、麻酔を吸入、後は意識なし、
  • 6時頃には目が覚める。
    麻酔から覚めはじめると、ちょっとかつほんの一時気持ち悪く感じたので、酸素を意識的に一杯吸い込む、直ぐに気持ち悪さは直る。呂律が回らないのを自覚する。
    ベッドの位置が90度変わっていて、点滴が左腕に入っている、術後患部からのリンパ液などの排出のためのドレインが腹部から出ていて貯めにつながっている、膀胱から尿道を経由してカテーテルが挿入されており尿の排出が行われている。という状況で3本の管が身体に入っている。
    痛みは予想通り全く来ない。意識がほぼ完全に戻ったので、邪魔な酸素吸入を外していると、看護婦から明朝9時までは駄目と言われる。考えてみれば、全身麻酔直後で酸素補給をしなければ大事に至る人も出るのだろう。

 この3本を下げながら手術後動き始めるのは正直言って少々大儀である。しかし、尿を取るというような心配がなく、楽であることは後でカテーテルが抜かれてみるとよくわかる。
 前日は軽い食事、当日は食事なし、その翌日の昼食まで食わずなのだから、とにかく腹が減って仕方がない。手術日の夜から「腹減った」と家族や兄弟にメールを入れた。事実そうだったし、それを入れれば安心すると思ったからである。個室でこの病棟だからということで使ったが、黙認いただいたようだ、メールは有り難い。
5日目
《術後1日目》
術後も痛みはない(予想通り)。朝酸素もとれる。

 実はタバコは入院前日まで少々(1日数本)吸っていた。タバコに関してはこんなことがある。B病院で先生からタバコをやめるように言われた。先生に「それは免疫力向上のためですか」と聞くと、先生は「・・・・」となった。タバコを吸うと胆が出るが、これは白血球の死骸が混じっていることを知っていたからである。ある本には、前立腺癌とタバコは無関係と書いてある。手術を決定した9月12日に入院の説明を看護婦から聞いていると、タバコを指摘され「タバコを吸う人は全身麻酔で胆が出て大変だから今すぐやめなさい」と言われた。これで、タバコは麻酔との関係?と思った。タバコが動脈硬化に一番悪いのは知っている。
 この後、こんな計算をしていた。以前は6mgなどと表示されていたものを吸っていたのだが、年齢と共にこれがきつくなり、ここ半年位の間に3mg→1mgなどとなっていた。このようにmg(=タール分)の低下により胆が減少していた。どうもmgはタバコの種類でコントロールしているのではなくフィルターでコントロールしているらしい。1mgものはフィルターが密で吸うのに骨が折れる。この結果、胆も少なくなっているのだから、麻酔時の影響は小である、と勝手に考えたのである。これが、正解かどうかは知らない。しかし、胆は酸素マスクを外してしばらくして1回吐き出しただけだった。結構、濃いのが出た。しかし、肺の中からはその後も過去の蓄積物を吐き出すために、口の中にぬめりがあった、という状況は退院するまで続いていた。偶に胆を吐き出すものだから、妻は「タバコを今も吸っているのでしょう」と疑ったのだが「45年も吸ってきた肺が急に綺麗になるかよ」というと一応納得したようだ。

  • 朝、酸素吸入が外された。ガスが出はじめた。ガスを出すとその振動で患部にひびく(私の場合痛いと言うほどではない)、考えて見れば、患部近いところに肛門があり、そこでラッパのベルのような肛門の振動があるのだから当然だろう。
  • 流動食の軽い昼食が出た。ぺろりだった。
  • 抗生物質などの薬をもらっていないと聞くと、必要ないので出しません、といわれる。
  • 午後になり、可搬型のX線装置が来て、腹部と胸部の写真をとった。腹部は術の具合を見るのだろうが、胸部は麻酔(肺の復活)などの影響を見るのだろう。
  • 歩行しても良いと言われたが38度を超える発熱でふらつくのでやめ、明日からとする。発熱だが、身体に異常が起これば発熱する。摘出手術し身体に傷がついたのだから当然発熱する、と単純理解している。
《不思議なこと》
 術後、ベッドから立ち上がったり、ベッドに戻ろうとしたときに、左足が不自由なのに気付いた。どのように不自由かというと、右足は伸ばしたまま難なく上がるのであるが、左足は上げようとすると付け根の筋が痛むのでということに加え力が入らないのだ。術前にこんなことはなかった(ように思う)ので、手術で多少の何かがあったのかも知れない。痛みがとれてくると少しは上がるようになってきた(入院中は駄目だった)。ただし、右足以上に力を入れなければならない。こうすると、腹に力が入り漏れが起こる。月末にはこんな状態になっている。普通に歩くには支障はないし、通常状態では何の意識もしないのだが、気にすれば右回りをしようとしたときに足の引きつけが弱いような気もする。右回りがし難い。ひょっとすると、後述の左足付け根の鬱血と関係あるかも知れない。ゴルフに影響するか?。
6日目
《術後2日目》
  • 発熱37度台は続いている、熱が出ても38度以上が継続状態にならなければ解熱剤などは使わないと言われる。
  • 左腹部に入っていたドレインを夕方抜く。抜くときの痛みは何もなし。ドレインからの排出量がある程度に治まったら抜くのだそうである。塞ぐことはしないでガーゼを当て自然に塞がるのを待つのだが、あまりその後出てくるものもなく更に2日程度で傷口は塞がってしまった。
7日目
《術後3日目》
  • 発熱37度台は続いている、
  • 翌日のカテーテル抜きのためにX線写真をとる。まず、普通の状態で撮り、今度はドレインから膀胱に造影剤を入れ膀胱と尿道の接合の状況を把握した。医師から異常なしを報告される。造影剤を尿道から膀胱に入れる時、医師から尿意を感じますか、と聞かれたが、感じなかった。垂れ流しで手術後からここまで膀胱収縮なしだから感じないで当然なのかも知れない。縫合は正常だった。
  • 食欲旺盛だが、便意を催さない。手術前には腸に何も入っていないので当然とは思うのだが、変に便が固くなると苦労しそうと思い夕食後看護士に下剤を要求した。これは翌朝の快便となったが、ガスが出るときと同様、ちょっと患部にひびくという感じがした。
8日目
《術後4日目》
  • 発熱37度台は続いている、
  • 尿道に挿入していたカテーテルを抜く(8時半)、一瞬ちくりとするが、それで終わってほっとした。これが最大の痛みであった。
  • 多分尿道や周辺筋肉に腫れやダメージが残っている。尿は垂れ流し状態だから、尿が溜まらず尿意などはない(後で思ったこと)。尿意などなくて当たり前なのだろうが、それを聞かれるから自分の身体がおかしいかなと思ってしまう。
    急に排尿処理で忙しくなる。夜は特に忙しい。
 今後、尿の統計をとって欲しいと言われる。「1回の小水で、尿瓶にとれた尿がどれくらい、パッドに漏れた尿がどの位」その他に「尿意があったのか、なかったのか」を記録するのである。ところが、最初は尿意などほとんどなかった。考えて見れば、術後直ぐの尿道は腫れているなど少なくとも正常の状態ではないだろう、筋肉も緩んでいるだろう。そのような状況では尿は漏れてしまう。漏れてしまうから、尿意はもよおさない、ということになりそうである。
 尿道や筋肉が正常になるに従い、漏れは少なくなり膀胱に溜まる尿が増えてくる。そうなれば自然に尿意は感じるようになる。
 私の場合、2日間ほどは垂れ流し状態で尿意などなかった。このままいつまで、こんな状態が続くのだろうと思い始めた。また、静かに寝ていると尿が溜まり尿意を催す、ところが尿を出そうとして起きあがると体勢の変化から尿道への圧力が高まり(変動し)尿が漏れはじめる。一旦漏れはじめれば、それを弱った筋肉で止めることはできない。
 こんなことから、ベッドに尿瓶を置き、尿意を催したら一旦その体勢のまま尿を尿瓶にとり、それから起き上がるなどの体勢の変更をすることにした。これによりパッドに漏れる量を少なくし、パッドの使用量も減らすことができた。何より一番なのは「パッドが尿で濡れて気持ち悪い状態が減ること、面倒が減ること」であった。パッド消費は当初約20枚/1日であった。

  骨盤底筋は肛門と尿道を取り巻くように8の字状にできているそうだ。こんな風になっているから、前立腺を切除し、尿道と膀胱を直接縫合しようとしたときは、筋肉部分までいじる必要があるのだろう。病状や手術のバラツキ、その他諸々の要因で失禁状況は異なって来るのだろう。

骨盤底筋訓練:息を吸いながら肛門を絞め5秒継続し、息を吐きながら緩め、これを一連で10回繰り返す。1日にこれを10回やるという訓練も必要になった。半分位は何とかやっているように思うのだが、1日100回やる忍耐は結構大変である。こんなことをいうとお医者さんには怒られてしまいそうである。お医者さんや看護士のほとんどは、こんな状態になった経験はないだろう。これは仕方がない。経験した人間の表現や対処が一番かと思って記述している(インターネットでいろいろ説明が出ている)。
 
9日目
《術後5日目》
  • 発熱37度台は続いている、
  • 垂れ流しの尿処理に追われる。9〜12:+5〜8
  • とにかくやることはない。テレビばかり見ていれば目が疲れる。本も雑誌ではあっという間に読んでしまい、きりがない。こんな風に思っていたのでなかなか先に進まない趣味本を持っていったのだが根気がない(睡眠薬にはなった)、小水取りとデータ作成をしながら最後の5日間を過ごした。
  • こんな現象もある。
    ・ガスを出そうとすると小水も出てしまう(連動している筋肉をうまく使えないのだろう)。
    ・希にかつ一時だが軽い痛みが走る(痛いと言うほどではなく:とにかく切ったのだろうから、神経的な問題なのか?)
10日目
《術後6日目》
  • 発熱37度台は続いているが身体が慣れたせいか、この頃から多少熱があったも不快感はない。
  • シャワーを使えるようになる。
  • 足の付け根、太股に鬱血現れる。これは1週間後にはほぼ消えた。
  • 同時に両足のだるさを感じる。平常状態でも夜寝るときになると足のだるさを感じ、自分でもんだりしながら寝入る場合がある私だが、このだるさはちょっと手術の影響のように思われる(術後22日経過し知ったことだが、リンパ腺の影響のように思われる)。
  • 多少尿意を感じるようになる。膀胱に溜まるようになったのだろう。しかし、ちょっとした体勢の変化で尿が漏れてしまうので、尿瓶をベッドに置き、尿を取ってから起きるようにする。
11日目
《術後7日目》
声帯が何となく変で声が正常に出ない(他人が声の変化をわかる)。当初は風邪かと思ったがそうではなさそうである(原因不明)
鬱血と同様、身体が何かを吸収している影響なのかも知れない。忘れなければ、いずれお医者さんに聞いてみよう。
12日目
《術後8日目》
退院、10時半には家に着く(40分位)。事務所に出ようとしたら、今日くらい家にと妻や息子に言われそうする。
その後
  • 腹の絆創膏はあっという間にはがれなくなる。
  • 手術後数日して便が出はじめ、何となく感じていることがある。それは、大便の肛門近くの部分の水分が減っているのではないかということである。私の通じはよい方である。ところが手術後は、ほんの一区間それまでより水分不足を感じる便で、最初だけ出すのにちょっとだけ骨が折れるようになったからである。大腸に隣接する前立腺がなくなった影響があるのかも知れない。また、1日に2回の快便というのも多くなった。悪いことではないが、変である。

《特記事項》
・術後に微熱が続いていたが、38度以上にならなければ問題なしとされ、氷枕以外の何の対処もしなかった。
・薬は何も出してもらえなかった。必要がないらしい。
・体重は入院時と退院時は変わらず。筋肉が少々衰え、体重が変わらないと言うことは少し肥った?

《入院費》   自己負担率30%
概略、下記のごとくである。腹腔鏡手術には保険が適用されないが、通常の開腹手術で長い期間の入院となればそれなりにかさむ費用もあるので、保険適用外をそのまま鵜呑みには評価できないだろう。何と言っても「入院期間も短く、痛みも少ない(私はほとんどない)、回復が早い、のが一番」である。
通常費用   ¥156,000入院費(下記以外)
高度先進医療費¥480,000腹腔鏡による手術費(保険給付外)
合 計¥636,000 
この治療に腹腔鏡を利用しはじめたのは21世紀に入ってかららしい「貴方の病巣は10年ほど前から出来たのではないか」と入院時医師から告げられたが、出来て間もなく発見されていれば10年ほど前通常の開腹手術(事業上は大変な時期)、変な話しだが「10年自分の病気を知らなかったから、何年かの実績を持つ最新の手術法で行えた」というタイムリーな幸運と言うものを感じないわけには行かない。
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